日々読んだ本(漫画、映画、例外的にテレビドラマ)の感想を、
ネタバレあり、粗筋なしで書いています。
批評批判は目的ではなく、個人的な感想文です。
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『覘き小平次』

【京極夏彦 角川文庫】

 

『嗤う伊右衛門』に続く怪談シリーズ第二弾だそうなんだけど、この怪談の元ネタを全然知らない。

のでどの登場人物がどこまで元になった話しに出てくるのかはわからない。

wikiを見る限り大筋はそのままだったよう。

 

小平次という天下随一の幽霊役者の祟りというのが元の話しなのだけど、それを下敷きに登場人物それぞれの視点から物語は進んでいき、後半でついに小平次が殺されるという事件が起こる。

正直この事件が起こるまでの展開がちょっとだるい。

 

この怪談シリーズは巷説百物語ともリンクしている(というか京極作品はみんなリンクしている)ので治平と徳次郎がちょこちょこ出ている。又市も名前だけ。

又市一味が関わったためなか元ネタよりはハッピーエンドな雰囲気がある。

お塚の解釈が割と好き。

 

『華氏451度』

【レイ・ブラッドベリ 訳:宇野利泰 早川書房】

 

今更そんなことを言うのかと思われるかもしれないけれど、華氏451度って本(紙)が燃える温度のことなんだな。

って1ページ目に知る。

 

難しい用語や設定が出てくるわけではないから、古典SFとしてはライトな部類だし、SFというより寓話的な印象。終盤の唐突さなんかも。

そもそも電子書籍でなんぼでも読める現代で、焚書という業務そのものは象徴的ではあるけれど、現実味はない設定なので、その辺りはやっぱり50年代に書かれたものだなぁ。

聖書やシェイクスピアなどの古典文学が禁書とされ、それらを焚書する部署に勤めるモンターグが主人公。

人々は読書の代わりに耳にはめる小型ラジオを聞いたり、大画面のテレビを通じて与えられるものだけを享受して暮らしている。

どこかと戦争をしているらしいけれど、戦況がどうであるかとか、どのような戦争をしているのかなどは、自分の夫が徴兵されても気にならない。それぐらいみんな、自分で考えたり疑問を持つことをしなくなっているという社会。

その中でモンターグは世の中の色んなことに疑問を持つ少女に出会い、ある日焚書の業務の中で本を1冊持ち帰ってしまう。

 

ただ主人公以外の登場人物がみんな考えるのを放棄して脳天気に生きているわけではなく、妻は自分でもわからないうちに自殺を試みるし、そういう人間が多いことも示唆される。

妻の友人たちもモンターグが朗読した詩を聞いて激しく動揺する。

職務に忠実だと思われたモンターグの上司は古今東西の書物に精通している。

みんなどこかでこの社会をおかしいと感じながら暮らしている。

 

モンターグの上司ミルドレッドが古典は切り詰めて十五分のラジオに、それをさらにカットして1ページのダイジェスト版に、映画もダイジェスト版にという話しをするのだけど、最近そういう話しを聞いたな。

映画の粗筋まとめのYouTubeやまとめサイト、140字でまとめられる情報。それ以上はいらないという層がいるっていう。

でもブラッドベリの先見性がすごいというより、とりま概要だけわかればいいっていう人は50年以上も前からいるということなんだろう。

それにしても上の話しに続けてスポーツしておけばいいっていうのはスポーツに対しての偏見だけどな。

 

それにしても『華氏451度』を今好き好んで読むタイプはわざわざ本を読むのがどうよいのかとか、焚書がどうしていかんのかとかの説明はしなくてもわかるんだろけど、あんまり直接的にその辺のことは触れられないからいまいちしっくりこない人もいそうだなと思いました。

現代社会を反映した映画化でもしてくれればいいのにな。『ブレードランナー』はしたんだし。

 

『その犬の歩むところ』

【ボストン・テラン 訳:田口俊樹 文春文庫】

 

イラク帰還兵の主人公が出会った犬のギブのそれまでの生い立ちの前半と、主人公がギブを飼い主に返しに行くという話しになる後半という二部構成。

前半からずっと主人公の語りというか、手記のような形で進む。

ジャック・ロンドンの『野生の呼び声』などのように、これも犬はメインではあるけれど擬人化されることはなく、ギブが出会う人たちのエピソードを通して犬が描かれる。

9.11やハリケーン、カトリーナの傷跡残るアメリカが描写されているが、それよりも全編通して犬というのがいかに尊いかひたすら綴られていて、犬好きは涙腺が緩むポイントだらけ。

 

終盤の山火事のくだりはハラハラを通り越してもしも死んだらこの本捨てるぞぐらいの気持ちになったけど、犬好きの皆さんはとりあえず安心して最後まで読んでください。

 

『きみの友だち』

【重松きよし 新潮社】


10本の連作短編。

恵美という少女とその周辺の子たちをそれぞれ主人公にして語られる。

小学校高学年〜中学生の少年少女たちの人間模様が、「きみ」という二人称で語られるのが特徴的。

綺麗事だけではない小中学生の人間関係を優しい視線で描いてて、中学生くらいが読むといいかも。


ただラストの「きみの友だち」の章でずっと物語ってきた「僕」が誰かわかるのだけどこの章がまるごと蛇足に感じた。

誰なのかわからなくても別にいいし、明かすならさらっとでよかったな、と。

大人の読者は僕に自分を重ねて少年少女たちを見守りつつ読んでたのに、急に僕の正体明かされると冷めちゃうし、その前の「花いちもんめ」の章がよかっただけに残念な気持ち。


『土葬症 ザ・グレイヴ』

JUGEMテーマ:ミステリ

【周木律 実業之日本社】 大学の探検部が夏合宿で訪れたキャンプ地で肝試しをしようとするも、道に迷い廃病院へ辿り着く。 そこで次々と惨劇が起こるホラーかと思ったらミステリーだった。 スラッシャーホラー的なものを期待して読み始めたら、途中から、これただのミステリーだなってなった。 いや、それ自体は別にいいんだけど、ホラーとしてもミステリーとしてもなんか軽いなーという印象。 二時間もかからずサクっと読めます。90分もののB級ホラー映画みたいな感じ。 文中、令和の時代になって云々って表記があって、この本自体の出版が今年の6月ということは、執筆期間すごい短いのでは……? 書いてる途中で令和になったんだとしても。 というかこの本、夏の話しなのに本が出版されたころはまだ夏になっていないという。 令和の夏って設定にしなくてもよかったのに、言いたかったのかな。令和。 細かい話しついでに言うと、終盤の会話で、 「そう、”Linos”なんですよ」 って言われた刑事がその後 〈ライナスか、あるいは、リノスか――〉 と悩むんですけど、耳で聞いたんだから悩むのはスペルだろうと。 編集とか校正でつっこまれなかったのかな。 いまいち恐怖を感じないまま、ラストに脱力の動機が明かされる。そんなライトなホラー風ミステリーでした。
『どこの家にも怖いものはいる』

【三津田信三 中央公論新社】

 

刀城言耶シリーズとはまた違う、実録怪談の体を取るホラー小説。

実録の体裁なので、作家の僕・三津田信三が、自分のファンであり編集者の三間坂から気になる二つの怪談を教えられる。

全然違う話しなのに、どことなく共通点があることから、他にも似たような話を探した結果、合計5つの家にまつわる奇妙な話しが集まる。

その5つと、僕と編集者の解釈パートによって構成される一見短編集のような長編ホラーです。

 

一つ一つの話しがそれぞれ怖いのだけれど、幕間のパートで共通点がないとミスリードすればするほど隠したい部分が強調されてしまって、終章でぞっとするべき部分であんまりぞっとできないというのが残念。

どこまで虚構なのかわからないよう、三津田信三自身に関する情報はそのまま載せてるのだろけど、自著の話し多すぎて宣伝っぽいのが気になるな。

 

一つ一つの話しの怖さはさすがです。

私が面白かったと思うのは二話目の「異次元屋敷」かな。割れ女の話し。

『The Book』

【集英社 乙一】

 

ジョジョのノベライズシリーズ、乙一編。

舞台は4部のその後の杜王町で、メインのメンバーもだいたいそのまま。

これを執筆していたのがたぶん、『ZOO』とかの頃だったと思うのだけれど、ちょくちょくジョジョの小説の進捗が芳しくない…とこぼしていたような記憶があり、大変なんだなーと思っていた思い出。

その頃、私はジョジョを未読だったのでその大変さがいまいち想像できてなかったけど。

読んでみて、たぶん、乙一は人のキャラや設定を借りて書くのに慣れてないのかな、という印象。

まあ、普通の作家は慣れてないのかもしれない。

あと、超ネガティブ陰キャな作風だった(今はそうでもないけど)当時の乙一、超ポジティブ肯定感の塊みたいな荒木キャラが書きにくそう。

 

という感じでこじらせが行間にただよってたけど、オリジナルキャラのパートは乙一らしい嫌な話しで、そういうじめっと感は荒木先生からは出てこないから新鮮でいいと思いました。

 

ストーリーは、4部後の2000年の年明けから数カ月にわたる、露伴と康一が遭遇した殺人事件の物語。

主にオリジナルキャラである、少年と少女、そして、数年前に起こった壁のはざまに閉じ込められた女性の視点で語られる。

オリジナルのスタンド「The Book」がおもしろかったね。

(でもラストバトル、露伴が最初に到着してたらあんまり苦戦せずに露伴が勝てそうなスタンドだった)

 

康一くんの爽やかさでなんとなくきれいに終わった気になるけど、だいぶ陰惨ですよ。こいつは。

仗助にとってはけっこう苦い事件になったんじゃあないかなあ。

億泰がとても善戦しててよかったね。

『岸辺露伴は戯れない』

【北國ばらっと/他 集英社】

 

スピンオフ短編小説集第二弾。

原作の方が動かないで統一してるのだから、こちらも叫ばないのままでもいいような。今回の戯れないというタイトルもあんまりしっくりしてないけど。そりゃ戯れないよ。仕事だもの。

 

「幸福の箱」 北國ばらっと

 

古美術商が持っていた謎の箱の話し。

叫ばないの時も思ったけど、この作者さんは荒木先生に寄せようと頑張りすぎて比喩とかキャラが小説としてはちょい浮いてる。

露伴、結婚しそうもないけど、女嫌いというわけでもなく、意外とかわいこちゃんに弱かったりするよね。

 

「夕柳台」 宮本深礼

 

杜王町にある住宅街で起こる怪異の話し。

確かに露伴って小学生に防犯ブザー鳴らされそうだよな。

冒頭大人げなさすぎて笑った。

 

「シンメトリー・ルーム」 北國ばらっど

 

大学で起きた殺人事件と、全身シンメトリーの謎の男の話し。

これは漫画で読みたい感じの話しだったな。

センター分けの露伴想像したらだいぶ面白かった。

一番、アクティブな話しでジョジョっぽくてよかったです。

 

「楽園の落穂」 吉上亮

 

伝説の小麦を編集者とその娘と共に取材に行く話し。

露伴と子供という組み合わせ相性いいよね。

やや動機部分がシンメトリー・ルームと似てるんだけど、作者違うのでたまたまかぶったのだろうなあ。

まあでも、牛みたいなモブおじさんに口移しで粥食べさせられそうになる露伴先生がハイライトです。嘘ついてない。

『岸辺露伴は叫ばない』

【北國ばらっと/他 集英社】

 

『岸辺露伴は動かない』の小説版。

4人の作家による5編。

あんまり作家それぞれの個性が出ているという感じはなくて、みんな原作の雰囲気に対して堅実という印象。

ヘブンズ・ドアーの使いどころって難しいなあ。

 

「くしゃがら」 北國ばらっと

同僚漫画家から見せられた規制単語リストに載っていた「くしゃがら」という言葉に取り憑かれていく、という話し。

漫画家岸辺露伴らしい作品。

オリキャラをがんばって荒木風にしてるんだろうなあとは思うけど、小説でやるとちょっと読みにくいなあ。

 

「Blackstar.」

メリーさんの都市伝説風に、写真に写る謎の男が徐々に近づいてくるという話し。

シュールなホラーでいいんじゃないでしょうか。

 

「血栞塗」 宮本深礼

図書館の本の間に、見つけると不幸になるという赤い栞がある、という話し。

司書のキャラもうちょっと怖くできたんじゃ?という気がする。

好奇心の権化の露伴ならではという。

 

「検閲方程式」 維羽祐介

前の話しに続いてまた図書館スタート。今度は大学図書館だけど。

謎の方程式の話し。

細かいことなんだけど、最後の解決を導くためにいつもスケッチブック持ち歩いている露伴に腕にメモ取らせるのはどうかなあと思ってしまいました。

いい話風に終わってよいのではないでしょうか。

 

「オカミサマ」 北國ばらっと

書き下ろし。

お金の取引をなかったことにする「オカミサマ」の話し。

破産直後の露伴が、お金は大事だなって多少は反省するのが偉いところ。

まあでも、露伴にはいつまでも突然山買って破産するような人間であってほしいけど。