日々読んだ本(漫画、映画、例外的にテレビドラマ)の感想を、
ネタバレあり、粗筋なしで書いています。
批評批判は目的ではなく、個人的な感想文です。
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『きみの友だち』

【重松きよし 新潮社】


10本の連作短編。

恵美という少女とその周辺の子たちをそれぞれ主人公にして語られる。

小学校高学年〜中学生の少年少女たちの人間模様が、「きみ」という二人称で語られるのが特徴的。

綺麗事だけではない小中学生の人間関係を優しい視線で描いてて、中学生くらいが読むといいかも。


ただラストの「きみの友だち」の章でずっと物語ってきた「僕」が誰かわかるのだけどこの章がまるごと蛇足に感じた。

誰なのかわからなくても別にいいし、明かすならさらっとでよかったな、と。

大人の読者は僕に自分を重ねて少年少女たちを見守りつつ読んでたのに、急に僕の正体明かされると冷めちゃうし、その前の「花いちもんめ」の章がよかっただけに残念な気持ち。


『土葬症 ザ・グレイヴ』

JUGEMテーマ:ミステリ

【周木律 実業之日本社】 大学の探検部が夏合宿で訪れたキャンプ地で肝試しをしようとするも、道に迷い廃病院へ辿り着く。 そこで次々と惨劇が起こるホラーかと思ったらミステリーだった。 スラッシャーホラー的なものを期待して読み始めたら、途中から、これただのミステリーだなってなった。 いや、それ自体は別にいいんだけど、ホラーとしてもミステリーとしてもなんか軽いなーという印象。 二時間もかからずサクっと読めます。90分もののB級ホラー映画みたいな感じ。 文中、令和の時代になって云々って表記があって、この本自体の出版が今年の6月ということは、執筆期間すごい短いのでは……? 書いてる途中で令和になったんだとしても。 というかこの本、夏の話しなのに本が出版されたころはまだ夏になっていないという。 令和の夏って設定にしなくてもよかったのに、言いたかったのかな。令和。 細かい話しついでに言うと、終盤の会話で、 「そう、”Linos”なんですよ」 って言われた刑事がその後 〈ライナスか、あるいは、リノスか――〉 と悩むんですけど、耳で聞いたんだから悩むのはスペルだろうと。 編集とか校正でつっこまれなかったのかな。 いまいち恐怖を感じないまま、ラストに脱力の動機が明かされる。そんなライトなホラー風ミステリーでした。
『どこの家にも怖いものはいる』

【三津田信三 中央公論新社】

 

刀城言耶シリーズとはまた違う、実録怪談の体を取るホラー小説。

実録の体裁なので、作家の僕・三津田信三が、自分のファンであり編集者の三間坂から気になる二つの怪談を教えられる。

全然違う話しなのに、どことなく共通点があることから、他にも似たような話を探した結果、合計5つの家にまつわる奇妙な話しが集まる。

その5つと、僕と編集者の解釈パートによって構成される一見短編集のような長編ホラーです。

 

一つ一つの話しがそれぞれ怖いのだけれど、幕間のパートで共通点がないとミスリードすればするほど隠したい部分が強調されてしまって、終章でぞっとするべき部分であんまりぞっとできないというのが残念。

どこまで虚構なのかわからないよう、三津田信三自身に関する情報はそのまま載せてるのだろけど、自著の話し多すぎて宣伝っぽいのが気になるな。

 

一つ一つの話しの怖さはさすがです。

私が面白かったと思うのは二話目の「異次元屋敷」かな。割れ女の話し。

『The Book』

【集英社 乙一】

 

ジョジョのノベライズシリーズ、乙一編。

舞台は4部のその後の杜王町で、メインのメンバーもだいたいそのまま。

これを執筆していたのがたぶん、『ZOO』とかの頃だったと思うのだけれど、ちょくちょくジョジョの小説の進捗が芳しくない…とこぼしていたような記憶があり、大変なんだなーと思っていた思い出。

その頃、私はジョジョを未読だったのでその大変さがいまいち想像できてなかったけど。

読んでみて、たぶん、乙一は人のキャラや設定を借りて書くのに慣れてないのかな、という印象。

まあ、普通の作家は慣れてないのかもしれない。

あと、超ネガティブ陰キャな作風だった(今はそうでもないけど)当時の乙一、超ポジティブ肯定感の塊みたいな荒木キャラが書きにくそう。

 

という感じでこじらせが行間にただよってたけど、オリジナルキャラのパートは乙一らしい嫌な話しで、そういうじめっと感は荒木先生からは出てこないから新鮮でいいと思いました。

 

ストーリーは、4部後の2000年の年明けから数カ月にわたる、露伴と康一が遭遇した殺人事件の物語。

主にオリジナルキャラである、少年と少女、そして、数年前に起こった壁のはざまに閉じ込められた女性の視点で語られる。

オリジナルのスタンド「The Book」がおもしろかったね。

(でもラストバトル、露伴が最初に到着してたらあんまり苦戦せずに露伴が勝てそうなスタンドだった)

 

康一くんの爽やかさでなんとなくきれいに終わった気になるけど、だいぶ陰惨ですよ。こいつは。

仗助にとってはけっこう苦い事件になったんじゃあないかなあ。

億泰がとても善戦しててよかったね。

『岸辺露伴は戯れない』

【北國ばらっと/他 集英社】

 

スピンオフ短編小説集第二弾。

原作の方が動かないで統一してるのだから、こちらも叫ばないのままでもいいような。今回の戯れないというタイトルもあんまりしっくりしてないけど。そりゃ戯れないよ。仕事だもの。

 

「幸福の箱」 北國ばらっと

 

古美術商が持っていた謎の箱の話し。

叫ばないの時も思ったけど、この作者さんは荒木先生に寄せようと頑張りすぎて比喩とかキャラが小説としてはちょい浮いてる。

露伴、結婚しそうもないけど、女嫌いというわけでもなく、意外とかわいこちゃんに弱かったりするよね。

 

「夕柳台」 宮本深礼

 

杜王町にある住宅街で起こる怪異の話し。

確かに露伴って小学生に防犯ブザー鳴らされそうだよな。

冒頭大人げなさすぎて笑った。

 

「シンメトリー・ルーム」 北國ばらっど

 

大学で起きた殺人事件と、全身シンメトリーの謎の男の話し。

これは漫画で読みたい感じの話しだったな。

センター分けの露伴想像したらだいぶ面白かった。

一番、アクティブな話しでジョジョっぽくてよかったです。

 

「楽園の落穂」 吉上亮

 

伝説の小麦を編集者とその娘と共に取材に行く話し。

露伴と子供という組み合わせ相性いいよね。

やや動機部分がシンメトリー・ルームと似てるんだけど、作者違うのでたまたまかぶったのだろうなあ。

まあでも、牛みたいなモブおじさんに口移しで粥食べさせられそうになる露伴先生がハイライトです。嘘ついてない。

『岸辺露伴は叫ばない』

【北國ばらっと/他 集英社】

 

『岸辺露伴は動かない』の小説版。

4人の作家による5編。

あんまり作家それぞれの個性が出ているという感じはなくて、みんな原作の雰囲気に対して堅実という印象。

ヘブンズ・ドアーの使いどころって難しいなあ。

 

「くしゃがら」 北國ばらっと

同僚漫画家から見せられた規制単語リストに載っていた「くしゃがら」という言葉に取り憑かれていく、という話し。

漫画家岸辺露伴らしい作品。

オリキャラをがんばって荒木風にしてるんだろうなあとは思うけど、小説でやるとちょっと読みにくいなあ。

 

「Blackstar.」

メリーさんの都市伝説風に、写真に写る謎の男が徐々に近づいてくるという話し。

シュールなホラーでいいんじゃないでしょうか。

 

「血栞塗」 宮本深礼

図書館の本の間に、見つけると不幸になるという赤い栞がある、という話し。

司書のキャラもうちょっと怖くできたんじゃ?という気がする。

好奇心の権化の露伴ならではという。

 

「検閲方程式」 維羽祐介

前の話しに続いてまた図書館スタート。今度は大学図書館だけど。

謎の方程式の話し。

細かいことなんだけど、最後の解決を導くためにいつもスケッチブック持ち歩いている露伴に腕にメモ取らせるのはどうかなあと思ってしまいました。

いい話風に終わってよいのではないでしょうか。

 

「オカミサマ」 北國ばらっと

書き下ろし。

お金の取引をなかったことにする「オカミサマ」の話し。

破産直後の露伴が、お金は大事だなって多少は反省するのが偉いところ。

まあでも、露伴にはいつまでも突然山買って破産するような人間であってほしいけど。

 

『ぜったいに飼ってはいけないアライグマ』

【さとうまきこ 理論社】

 

児童作家の著者がアライグマを衝動買いした顛末を綴ったもの。

この本が出たのが99年、著者がアライグマを買ったのが90年で、まだ当時インターネットもなかったし、今ほどアライグマが害獣として知られてはいなかっただろうが、こういう無知がアライグマを害獣にしたんだなぁというのがよくわかる一冊。

 

著者の愚かさ(CMで見たアライグマが可愛くて衝動買いし、エサはパンやスナック菓子)は腹立たしいばかりだし、ここに登場する著者の飼うアライグマや、近所の人が飼っていたアライグマが可哀想でならない。

確かに死ぬまで飼っただろうが、行間からは何の愛情も感じないしアライグマを知ろうと言う気持ちも感じられなかった。

 

今また、エキゾチックアニマルの飼育が流行っているようで、時代は繰り返すのだなと。

『無関係な死・時の崖』

【安部公房 新潮文庫】

 

短編が十本載っているので、印象に残ったものだけ感想を。

 

「夢の兵士」

 

「誘惑者」

始発を待つ待合所で、追手と逃亡者と思しき二人の男の間で交わされる不穏な会話で進み、ラストでわかる二人の本当の関係がなかなかサディスティック。

 

「家」

 

「使者」

講演の出番を待つ講師のところに火星人を名乗る男が現れるという突飛な話し。

この男が火星人だったかどうかは主人公にとっても読者にとってもどうでもいい感じのドライさがらしい。

 

「透視図法」

「賭」

 

「なわ」

川辺のスクラップ置き場を囲う壁の穴から覗いている男、スクラップ置き場で仔犬をいじめて遊ぶ少年達、そして川から上がってくる二人の姉妹という不気味で不快な展開の連続。

ぞっとする顛末に、唐突に現れる最後の段落。

他の短編に比べて展開の多い話しだった。

 

「無関係な死」

安部公房の主人公の理屈っぽさが如実に表れている。

自分の部屋に置かれていた見知らぬ死体をどうするか、それをずっと思案し続けるという話し。

それだけでこのページ数もつのがすごい。

 

「人魚伝」

安部公房の小説に登場する女性キャラは総じて怖いのだけど、そういう趣味なんだろうか。

沈没船に閉じ込められている人魚を見つけて、自分だけのものにしようと画策する男の話し。

うまく部屋に連れ帰ってきたものの、その後が意表を突く。

人魚が実は狂暴だというくらいならそれほど意外ではないのだけれど。

 

「時の崖」

『ぼくたちが越してきた日からそいつはそこにいた』

【文:ローダ・レヴィーン 絵:エドワード・ゴーリー 訳:柴田元幸】

 

猫派のゴーリーが珍しく犬描いてるな、と。

でも解説読むとぼちぼち犬は描いていたみたいですね。

 

本文はゴーリーではないので不条理な不気味さはないけど、庭にいた犬がいつまでも懐くわけでもなく、ずっとそにいい続ける感じは普通の子供向け絵本とは違うなと。

越してきた家の子たちが、犬が待っているものをあれこれ考え続け試し続け、結局見つからないんだけど、犬の求める物を見つけるためにがんばり続ける。それでいいんだ、っていうラストはなんだかいい。