日々読んだ本(漫画、映画、例外的にテレビドラマ)の感想を、
ネタバレあり、粗筋なしで書いています。
批評批判は目的ではなく、個人的な感想文です。
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『ぜったいに飼ってはいけないアライグマ』

【さとうまきこ 理論社】

 

児童作家の著者がアライグマを衝動買いした顛末を綴ったもの。

この本が出たのが99年、著者がアライグマを買ったのが90年で、まだ当時インターネットもなかったし、今ほどアライグマが害獣として知られてはいなかっただろうが、こういう無知がアライグマを害獣にしたんだなぁというのがよくわかる一冊。

 

著者の愚かさ(CMで見たアライグマが可愛くて衝動買いし、エサはパンやスナック菓子)は腹立たしいばかりだし、ここに登場する著者の飼うアライグマや、近所の人が飼っていたアライグマが可哀想でならない。

確かに死ぬまで飼っただろうが、行間からは何の愛情も感じないしアライグマを知ろうと言う気持ちも感じられなかった。

 

今また、エキゾチックアニマルの飼育が流行っているようで、時代は繰り返すのだなと。

『無関係な死・時の崖』

【安部公房 新潮文庫】

 

短編が十本載っているので、印象に残ったものだけ感想を。

 

「夢の兵士」

 

「誘惑者」

始発を待つ待合所で、追手と逃亡者と思しき二人の男の間で交わされる不穏な会話で進み、ラストでわかる二人の本当の関係がなかなかサディスティック。

 

「家」

 

「使者」

講演の出番を待つ講師のところに火星人を名乗る男が現れるという突飛な話し。

この男が火星人だったかどうかは主人公にとっても読者にとってもどうでもいい感じのドライさがらしい。

 

「透視図法」

「賭」

 

「なわ」

川辺のスクラップ置き場を囲う壁の穴から覗いている男、スクラップ置き場で仔犬をいじめて遊ぶ少年達、そして川から上がってくる二人の姉妹という不気味で不快な展開の連続。

ぞっとする顛末に、唐突に現れる最後の段落。

他の短編に比べて展開の多い話しだった。

 

「無関係な死」

安部公房の主人公の理屈っぽさが如実に表れている。

自分の部屋に置かれていた見知らぬ死体をどうするか、それをずっと思案し続けるという話し。

それだけでこのページ数もつのがすごい。

 

「人魚伝」

安部公房の小説に登場する女性キャラは総じて怖いのだけど、そういう趣味なんだろうか。

沈没船に閉じ込められている人魚を見つけて、自分だけのものにしようと画策する男の話し。

うまく部屋に連れ帰ってきたものの、その後が意表を突く。

人魚が実は狂暴だというくらいならそれほど意外ではないのだけれど。

 

「時の崖」

『ぼくたちが越してきた日からそいつはそこにいた』

【文:ローダ・レヴィーン 絵:エドワード・ゴーリー 訳:柴田元幸】

 

猫派のゴーリーが珍しく犬描いてるな、と。

でも解説読むとぼちぼち犬は描いていたみたいですね。

 

本文はゴーリーではないので不条理な不気味さはないけど、庭にいた犬がいつまでも懐くわけでもなく、ずっとそにいい続ける感じは普通の子供向け絵本とは違うなと。

越してきた家の子たちが、犬が待っているものをあれこれ考え続け試し続け、結局見つからないんだけど、犬の求める物を見つけるためにがんばり続ける。それでいいんだ、っていうラストはなんだかいい。

『楽しい夜』

映画はよく観てるんだけど、本は最近全然読めてないっすね・・・。

 

【編訳/岸本佐知子 講談社】

 

いろんな短編が詰まっていて、そのどれもが読書の楽しみにあふれている。

 

「ノース・オブ」 マリー=ヘレン・ベルティーノ

 

ボブ・ディランを連れて、戦場に発つ兄に会いに実家に戻って来たわたしの話し。

ボブ・ディランはほぼしゃべらないのでこれは本当にボブ・ディランなのだろうか・・・ということばかりに気を取られ。

しんみりするのにシュール。

 

「火事」 ルシア・ベルリン

 

末期の癌におかされている妹に会いにやってきたわたしの話し。

妹と再会した空港が火事になるので火事っていうタイトル。

再会の一瞬に、二人の姉妹の思い出を織り交ぜながらスピーディに展開していく。

 

「ロイ・スパイヴィ」 ミランダ・ジュライ

 

ひょっとしたら人為の大きな分岐点を見過ごしたかもしれないということを、ずっと後になって気が付くというのは絶望ほど強くもないけど、その後の人生をひどくしんどく感じさせるな。

 

「赤いリボン」 ジョージ・ソーンダーズ

 

一匹の病気を持った犬が子供を噛み殺したことから端を発して、村ではその対処がどんどんエスカレートしていき感染している犬だけではなく、犬以外も処分していくようになっていく。

エスカレートしていく様は怖いんだけど、娘を失った父親の語りはそれはそれで真に迫る。

 

「アリの巣」 アリッサ・ナッティング

 

本書の中で一番おかしな話し。

「地球上のスペースが手狭になったので、人類は全員、他の生物を体表もしくは体内に寄生させなければならないことだった」

から始まる。もうすでに奇妙な設定だけど、女優の「わたし」は見た目が変わらないように、骨の中でアリを飼うことにする。

グロテスクなんだけど、淡々と進むのでこれはこれでよいのか、と思ってしまうが、やっぱり気持ち悪いな。

他の作品も読んでみたい。

 

「亡骸スモーカー」 アリッサ・ナッティング

 

前出と同じ作家。葬儀場で働いている男は遺体の髪をタバコのように吸うことで、生前の記憶を見ることが出来る。

そんな男に恋しているわたしが、告白するよりも自分の髪の毛を吸って気づいてもらいたいと思う。

やっぱりちょっと薄気味悪いけど、前の話しよりは軽めで、かわいい印象すら抱く。

 

「家族」 ブレット・ロット

 

喧嘩を始めた夫婦が子供たちがいなくなっていることに気が付く。

子供達は意外な場所で意外な姿で見つかる。

 

「楽しい夜」 ジェームズ・ソルター

 

三人の女性が他愛無い話しをしているありふれた夜の話しかと思ったら、そうではないということが最後にわかる。

 

「テオ」 デイヴ・エガーズ

 

大きな山のような人間の話し。

ダイナミックで繊細。

 

「三角形」 エレン・クレイジャズ

 

喧嘩してしまったパートナーに、お詫びの品としてナチ時代に同性愛者につけられたワッペン(これが三角形)を買う。

このプレゼントをしてしまったがために迎える結末はちょっと声が出そうになるくらい怖いし無残。

 

「安全航海」 ラモーナ・オースベル

 

おばあちゃんばかりが乗った船、これはたぶん死出の旅。

どうして祖母ばかりなのかはわからないけど、海は晴れていてのどかで美しく、おばあちゃんたちもなんだか溌剌としている。

そういう美しい死出の旅であればという願いを感じる。

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

【フィリップ・K・ディック 訳:浅倉久志 ハヤカワ文庫】

 

映画『ブレードランナー』の原作としても有名な本書ですが、映画の方は観た記憶がないので映画の話しは脇へ置いて感想を。

 

火星から逃亡してきた八体のアンドロイドを追う賞金稼ぎのリック・デッカードの物語。

舞台は第三次世界大戦後、放射能に汚染された地球では動物がとても希少価値の高いものとして、みんな本物の動物を飼うことを願っている。

本物の動物を飼うことはステイタス以上に、人間性の証明としてほぼみんなが何かしらの動物(虫とか爬虫類も含む)を飼っているが、リックたち夫婦は電気羊しか飼っていない。

 

生き物が嫌いな人はこの辺、いまいち共感できなさそうな設定だな、と思いました。

私は動物好きなのでふむふむ、という感じですけど。

 

話しの筋はシンプルなんですが、アンドロイドの存在定義があとがきにあるように、非人間的なものの比喩としてアンドロイドがいて、マイノリティの比喩としてのアンドロイドじゃないのはだいぶほかの作品と違うな、と。

人間っぽいアンドロイドもいれば、アンドロイドっぽい人間もいる。

リックはそこで生物学上の区別の意味を見失い、仕事の意欲も喪失する。

 

しかし物語の舞台、1992年なんだなー。もう遠い昔だよ。

近未来がすでに過去になった時代にいるなんてめまいがする。

『すべての美しい馬』
【コーマック・マッカーシー 訳:黒原敏行 早川書房】

祖父の死で牧場が人手に渡ることを知った16歳のジョン・グレイディ・コールは親友のロリンズと馬に乗って、メキシコへ渡った。
道中で、年下の少年と出会い、思いがけない運命をたどっていく。

映画化しているようですが、そっちは観ていません。

主人公のジョン・グレイディと出会った少年ブレヴィンズとの道中は、冒険物語にも見える牧歌的なものなのだけど、ブレヴィンズの馬がいなくなって以降、不穏な展開に。
そして、ジョン・グレイディとロリンズが辿り着いた先で、ジョン・グレイディが身分違いの恋をすることにより一気にバイオレンスの色合いが濃くなる。
二人が刑務所送りにされてからの重苦しいほどの緊張感と暴力は青春小説とは呼び難い。
ジョン・グレイディの一本気な道徳観はこの不条理な暴力の中では清々しいし、ロリンズとの友情もいい。

会話のカッコがなかったり、一文の独特の長さが慣れないとなかなか読みにくい。翻訳大変だろうなぁと思う。
『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』
JUGEMテーマ:映画

あけましておめでとうございます。
元旦から観た映画がこれでよかったのか疑問ですが。
あと、まだ去年の映画感想全部書けていないという・・・。

【監督:コーネル・ムンドルッツォ ハンガリー・スウェーデン合作】

雑種犬に重税をかけられた街で、母親が演奏旅行でいない間別れた夫の元にリリと愛犬ハーゲンが預けられる。元々父親と折り合いが悪く、ケンカの末ハーゲンが雑種だったためもあり捨てられてしまう。
捨てられたハーゲンは、街を彷徨い、闘犬にされ、そこを抜け出した後ついに保健所につかまってしまう。
一方、リリもハーゲンを探す。

という話しなんですが、主人公の少女リリがもっとがんばって、ハーゲンをかばっていれば捨てられなかっただろうし、捨てられた後ももう少し頑張って探してもらいたい。
『戦火の馬』の主人公くらいがんばってもらいたい。
犬版『猿の惑星』とも言われてますが、別にDNAいじられるわけでもないので、野良犬たちが数百匹暴れるだけでそこまで大騒ぎにはならない。
設定部分も、どうして雑種に重税かけられているのかわからない。

という具合にストーリー部分はだいぶ甘いんですが、実際の保護施設から連れてきたと言う250匹の犬たちがただただ凄い。
犬たちの仕事ぶりを観る映画。

しかしあのラストの後、犬たちがどうなるか考えると・・・逃げ切れるとは思えないし。

撮影に使われた犬たちはみんな飼い主が見つかって引き取られたそうですが。

 
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』
【監督:J・J・エイブラムス アメリカ】

ep1、とんで4、5、6を最近観たばっかりなんで、思い入れ薄いんですけど、その分あまり難しいこと考えず楽しめたかと。

新世代と親世代が上手いことバトンタッチできた新シリーズの1話目という感じで、残り2作が楽しみだなあ。
レイもフィンもポーも可愛いキャラで、新しいドロイドのBB8はもう見た目から可愛いし。

不安要素はカイロ・レンのキャラの弱さだけど、今後なんであんなになっちゃったのかがわかってきたらもうちょっとキャラ立ちするかもしれない。
 
『厭な物語』
【アガサ・クリスティー 他 文春文庫】

厭な話しばかり集めたアンソロジー。
イヤミス的な厭なオチ系かと思ったら、始めから終わりまでずっと厭な話しというのもあり、いろいろな厭な話し。
内容も内容なのでネタバレしつつ各話しの感想を。

「崖っぷち」 アガサ・クリスティー 訳:中村妙子
クリスティーらしい、じめっといやな話し。
この中では一番軽め。

「すっぽん」 パトリシア・ハイスミス 訳:小倉多加志
子供と母親のコミュニケーション不全。
多分そうなるんだろうな、というオチだけど、そのきっかけのすっぽんが鍋に放り込まれる描写がとてもいや。

「フェリシテ」 モーリス・ルヴェル 訳:田中早苗
このアンソロジーに入っていなかったら、もっとラストに落ち込むことになっただろうけど、厭なオチになるとわかっているので、ある程度の心構えは。
他と違ってリアリティのある厭な話し。

「ナイト・オブ・ザ・ホラー・ショウ」 ジョー・R・ランズデール 訳:盪蛙人拡
一行目からラストに至るまでずっと不快な小説。
意外な結末もどんでん返しもなくただただずっと厭な描写が続く滅入る。

「くじ」 シャーリー・ジャクスン 訳:深町眞理子
村人たちが集まってくじを引く。
このアンソロジーに入っているので、くじに当たった人にはろくなことがないだろうというのはわかるけれど、そこに至るまでの牧歌的な描写がオチとの落差を生む。

「シーズンの始まり」 ウラジーミル・ソローキン 訳:亀山郁夫
短編集『愛』に収録されていたので既読ですが、厭な話しではあるけれどソローキンの中では割とまともな話しのような気もする。

「判決 ある物語」 フランツ・カフカ 訳:酒寄進一
遠くにいるうだつのあがらない友人の話しだったはずが、主人公が父親と話し始めたところから突然の不条理ワールドに。
置いてけぼりのラスト。厭な話しというより不可解な話し。

「赤」 リチャード・クリスチャン・マティスン 訳:高木史緒
『地球最後の男』のリチャード・マシスンかと思ったら息子の方だった。息子も厭な話し書いてるんだなー。
男が拾い集めている赤いものが何かわかった瞬間げっそりする。

「言えないわけ」 ローレンス・ブロック 訳:田口俊樹
殺人犯と妹を殺された男の話しで、男が復讐を遂げるようなすっきりする話しなわけもなく。
ちょっと小洒落てるので厭な感じは薄いかもしれない。

「善人はそういない」 フラナリー・オコナー 訳:佐々田雅子
解説にもあるように「ナイト・オブ・ザ・ホラー・ショウ」みたいな唐突に降ってわいてくる暴力になす術もなく死んでいくという話しだけど、事が起こるまでが平和的なので事件ってこうやって起こるのかな、という気持ちにもさせる。

「うしろをみるな」 フレドリック・ブラウン 訳:夏来健次
解説を挟んでさらに後ろに収録されている作品。読むとその理由がわかる。
タイトルからラストは後ろが怖くなるような話なんだろうなーとは想像がつくけど、メリーさん的なものではなかった。
英語圏で発売した当時に読んだ人はもうちょっとぞっとしたかもしれない。