日々読んだ本(漫画、映画、例外的にテレビドラマ)の感想を、
ネタバレあり、粗筋なしで書いています。
批評批判は目的ではなく、個人的な感想文です。
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『岸辺露伴は戯れない』

【北國ばらっと/他 集英社】

 

スピンオフ短編小説集第二弾。

原作の方が動かないで統一してるのだから、こちらも叫ばないのままでもいいような。今回の戯れないというタイトルもあんまりしっくりしてないけど。そりゃ戯れないよ。仕事だもの。

 

「幸福の箱」 北國ばらっと

 

古美術商が持っていた謎の箱の話し。

叫ばないの時も思ったけど、この作者さんは荒木先生に寄せようと頑張りすぎて比喩とかキャラが小説としてはちょい浮いてる。

露伴、結婚しそうもないけど、女嫌いというわけでもなく、意外とかわいこちゃんに弱かったりするよね。

 

「夕柳台」 宮本深礼

 

杜王町にある住宅街で起こる怪異の話し。

確かに露伴って小学生に防犯ブザー鳴らされそうだよな。

冒頭大人げなさすぎて笑った。

 

「シンメトリー・ルーム」 北國ばらっど

 

大学で起きた殺人事件と、全身シンメトリーの謎の男の話し。

これは漫画で読みたい感じの話しだったな。

センター分けの露伴想像したらだいぶ面白かった。

一番、アクティブな話しでジョジョっぽくてよかったです。

 

「楽園の落穂」 吉上亮

 

伝説の小麦を編集者とその娘と共に取材に行く話し。

露伴と子供という組み合わせ相性いいよね。

やや動機部分がシンメトリー・ルームと似てるんだけど、作者違うのでたまたまかぶったのだろうなあ。

まあでも、牛みたいなモブおじさんに口移しで粥食べさせられそうになる露伴先生がハイライトです。嘘ついてない。

『岸辺露伴は叫ばない』

【北國ばらっと/他 集英社】

 

『岸辺露伴は動かない』の小説版。

4人の作家による5編。

あんまり作家それぞれの個性が出ているという感じはなくて、みんな原作の雰囲気に対して堅実という印象。

ヘブンズ・ドアーの使いどころって難しいなあ。

 

「くしゃがら」 北國ばらっと

同僚漫画家から見せられた規制単語リストに載っていた「くしゃがら」という言葉に取り憑かれていく、という話し。

漫画家岸辺露伴らしい作品。

オリキャラをがんばって荒木風にしてるんだろうなあとは思うけど、小説でやるとちょっと読みにくいなあ。

 

「Blackstar.」

メリーさんの都市伝説風に、写真に写る謎の男が徐々に近づいてくるという話し。

シュールなホラーでいいんじゃないでしょうか。

 

「血栞塗」 宮本深礼

図書館の本の間に、見つけると不幸になるという赤い栞がある、という話し。

司書のキャラもうちょっと怖くできたんじゃ?という気がする。

好奇心の権化の露伴ならではという。

 

「検閲方程式」 維羽祐介

前の話しに続いてまた図書館スタート。今度は大学図書館だけど。

謎の方程式の話し。

細かいことなんだけど、最後の解決を導くためにいつもスケッチブック持ち歩いている露伴に腕にメモ取らせるのはどうかなあと思ってしまいました。

いい話風に終わってよいのではないでしょうか。

 

「オカミサマ」 北國ばらっと

書き下ろし。

お金の取引をなかったことにする「オカミサマ」の話し。

破産直後の露伴が、お金は大事だなって多少は反省するのが偉いところ。

まあでも、露伴にはいつまでも突然山買って破産するような人間であってほしいけど。

 

『ぜったいに飼ってはいけないアライグマ』

【さとうまきこ 理論社】

 

児童作家の著者がアライグマを衝動買いした顛末を綴ったもの。

この本が出たのが99年、著者がアライグマを買ったのが90年で、まだ当時インターネットもなかったし、今ほどアライグマが害獣として知られてはいなかっただろうが、こういう無知がアライグマを害獣にしたんだなぁというのがよくわかる一冊。

 

著者の愚かさ(CMで見たアライグマが可愛くて衝動買いし、エサはパンやスナック菓子)は腹立たしいばかりだし、ここに登場する著者の飼うアライグマや、近所の人が飼っていたアライグマが可哀想でならない。

確かに死ぬまで飼っただろうが、行間からは何の愛情も感じないしアライグマを知ろうと言う気持ちも感じられなかった。

 

今また、エキゾチックアニマルの飼育が流行っているようで、時代は繰り返すのだなと。

『無関係な死・時の崖』

【安部公房 新潮文庫】

 

短編が十本載っているので、印象に残ったものだけ感想を。

 

「夢の兵士」

 

「誘惑者」

始発を待つ待合所で、追手と逃亡者と思しき二人の男の間で交わされる不穏な会話で進み、ラストでわかる二人の本当の関係がなかなかサディスティック。

 

「家」

 

「使者」

講演の出番を待つ講師のところに火星人を名乗る男が現れるという突飛な話し。

この男が火星人だったかどうかは主人公にとっても読者にとってもどうでもいい感じのドライさがらしい。

 

「透視図法」

「賭」

 

「なわ」

川辺のスクラップ置き場を囲う壁の穴から覗いている男、スクラップ置き場で仔犬をいじめて遊ぶ少年達、そして川から上がってくる二人の姉妹という不気味で不快な展開の連続。

ぞっとする顛末に、唐突に現れる最後の段落。

他の短編に比べて展開の多い話しだった。

 

「無関係な死」

安部公房の主人公の理屈っぽさが如実に表れている。

自分の部屋に置かれていた見知らぬ死体をどうするか、それをずっと思案し続けるという話し。

それだけでこのページ数もつのがすごい。

 

「人魚伝」

安部公房の小説に登場する女性キャラは総じて怖いのだけど、そういう趣味なんだろうか。

沈没船に閉じ込められている人魚を見つけて、自分だけのものにしようと画策する男の話し。

うまく部屋に連れ帰ってきたものの、その後が意表を突く。

人魚が実は狂暴だというくらいならそれほど意外ではないのだけれど。

 

「時の崖」

『ぼくたちが越してきた日からそいつはそこにいた』

【文:ローダ・レヴィーン 絵:エドワード・ゴーリー 訳:柴田元幸】

 

猫派のゴーリーが珍しく犬描いてるな、と。

でも解説読むとぼちぼち犬は描いていたみたいですね。

 

本文はゴーリーではないので不条理な不気味さはないけど、庭にいた犬がいつまでも懐くわけでもなく、ずっとそにいい続ける感じは普通の子供向け絵本とは違うなと。

越してきた家の子たちが、犬が待っているものをあれこれ考え続け試し続け、結局見つからないんだけど、犬の求める物を見つけるためにがんばり続ける。それでいいんだ、っていうラストはなんだかいい。

『楽しい夜』

映画はよく観てるんだけど、本は最近全然読めてないっすね・・・。

 

【編訳/岸本佐知子 講談社】

 

いろんな短編が詰まっていて、そのどれもが読書の楽しみにあふれている。

 

「ノース・オブ」 マリー=ヘレン・ベルティーノ

 

ボブ・ディランを連れて、戦場に発つ兄に会いに実家に戻って来たわたしの話し。

ボブ・ディランはほぼしゃべらないのでこれは本当にボブ・ディランなのだろうか・・・ということばかりに気を取られ。

しんみりするのにシュール。

 

「火事」 ルシア・ベルリン

 

末期の癌におかされている妹に会いにやってきたわたしの話し。

妹と再会した空港が火事になるので火事っていうタイトル。

再会の一瞬に、二人の姉妹の思い出を織り交ぜながらスピーディに展開していく。

 

「ロイ・スパイヴィ」 ミランダ・ジュライ

 

ひょっとしたら人為の大きな分岐点を見過ごしたかもしれないということを、ずっと後になって気が付くというのは絶望ほど強くもないけど、その後の人生をひどくしんどく感じさせるな。

 

「赤いリボン」 ジョージ・ソーンダーズ

 

一匹の病気を持った犬が子供を噛み殺したことから端を発して、村ではその対処がどんどんエスカレートしていき感染している犬だけではなく、犬以外も処分していくようになっていく。

エスカレートしていく様は怖いんだけど、娘を失った父親の語りはそれはそれで真に迫る。

 

「アリの巣」 アリッサ・ナッティング

 

本書の中で一番おかしな話し。

「地球上のスペースが手狭になったので、人類は全員、他の生物を体表もしくは体内に寄生させなければならないことだった」

から始まる。もうすでに奇妙な設定だけど、女優の「わたし」は見た目が変わらないように、骨の中でアリを飼うことにする。

グロテスクなんだけど、淡々と進むのでこれはこれでよいのか、と思ってしまうが、やっぱり気持ち悪いな。

他の作品も読んでみたい。

 

「亡骸スモーカー」 アリッサ・ナッティング

 

前出と同じ作家。葬儀場で働いている男は遺体の髪をタバコのように吸うことで、生前の記憶を見ることが出来る。

そんな男に恋しているわたしが、告白するよりも自分の髪の毛を吸って気づいてもらいたいと思う。

やっぱりちょっと薄気味悪いけど、前の話しよりは軽めで、かわいい印象すら抱く。

 

「家族」 ブレット・ロット

 

喧嘩を始めた夫婦が子供たちがいなくなっていることに気が付く。

子供達は意外な場所で意外な姿で見つかる。

 

「楽しい夜」 ジェームズ・ソルター

 

三人の女性が他愛無い話しをしているありふれた夜の話しかと思ったら、そうではないということが最後にわかる。

 

「テオ」 デイヴ・エガーズ

 

大きな山のような人間の話し。

ダイナミックで繊細。

 

「三角形」 エレン・クレイジャズ

 

喧嘩してしまったパートナーに、お詫びの品としてナチ時代に同性愛者につけられたワッペン(これが三角形)を買う。

このプレゼントをしてしまったがために迎える結末はちょっと声が出そうになるくらい怖いし無残。

 

「安全航海」 ラモーナ・オースベル

 

おばあちゃんばかりが乗った船、これはたぶん死出の旅。

どうして祖母ばかりなのかはわからないけど、海は晴れていてのどかで美しく、おばあちゃんたちもなんだか溌剌としている。

そういう美しい死出の旅であればという願いを感じる。

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

【フィリップ・K・ディック 訳:浅倉久志 ハヤカワ文庫】

 

映画『ブレードランナー』の原作としても有名な本書ですが、映画の方は観た記憶がないので映画の話しは脇へ置いて感想を。

 

火星から逃亡してきた八体のアンドロイドを追う賞金稼ぎのリック・デッカードの物語。

舞台は第三次世界大戦後、放射能に汚染された地球では動物がとても希少価値の高いものとして、みんな本物の動物を飼うことを願っている。

本物の動物を飼うことはステイタス以上に、人間性の証明としてほぼみんなが何かしらの動物(虫とか爬虫類も含む)を飼っているが、リックたち夫婦は電気羊しか飼っていない。

 

生き物が嫌いな人はこの辺、いまいち共感できなさそうな設定だな、と思いました。

私は動物好きなのでふむふむ、という感じですけど。

 

話しの筋はシンプルなんですが、アンドロイドの存在定義があとがきにあるように、非人間的なものの比喩としてアンドロイドがいて、マイノリティの比喩としてのアンドロイドじゃないのはだいぶほかの作品と違うな、と。

人間っぽいアンドロイドもいれば、アンドロイドっぽい人間もいる。

リックはそこで生物学上の区別の意味を見失い、仕事の意欲も喪失する。

 

しかし物語の舞台、1992年なんだなー。もう遠い昔だよ。

近未来がすでに過去になった時代にいるなんてめまいがする。

『すべての美しい馬』
【コーマック・マッカーシー 訳:黒原敏行 早川書房】

祖父の死で牧場が人手に渡ることを知った16歳のジョン・グレイディ・コールは親友のロリンズと馬に乗って、メキシコへ渡った。
道中で、年下の少年と出会い、思いがけない運命をたどっていく。

映画化しているようですが、そっちは観ていません。

主人公のジョン・グレイディと出会った少年ブレヴィンズとの道中は、冒険物語にも見える牧歌的なものなのだけど、ブレヴィンズの馬がいなくなって以降、不穏な展開に。
そして、ジョン・グレイディとロリンズが辿り着いた先で、ジョン・グレイディが身分違いの恋をすることにより一気にバイオレンスの色合いが濃くなる。
二人が刑務所送りにされてからの重苦しいほどの緊張感と暴力は青春小説とは呼び難い。
ジョン・グレイディの一本気な道徳観はこの不条理な暴力の中では清々しいし、ロリンズとの友情もいい。

会話のカッコがなかったり、一文の独特の長さが慣れないとなかなか読みにくい。翻訳大変だろうなぁと思う。
『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』
JUGEMテーマ:映画

あけましておめでとうございます。
元旦から観た映画がこれでよかったのか疑問ですが。
あと、まだ去年の映画感想全部書けていないという・・・。

【監督:コーネル・ムンドルッツォ ハンガリー・スウェーデン合作】

雑種犬に重税をかけられた街で、母親が演奏旅行でいない間別れた夫の元にリリと愛犬ハーゲンが預けられる。元々父親と折り合いが悪く、ケンカの末ハーゲンが雑種だったためもあり捨てられてしまう。
捨てられたハーゲンは、街を彷徨い、闘犬にされ、そこを抜け出した後ついに保健所につかまってしまう。
一方、リリもハーゲンを探す。

という話しなんですが、主人公の少女リリがもっとがんばって、ハーゲンをかばっていれば捨てられなかっただろうし、捨てられた後ももう少し頑張って探してもらいたい。
『戦火の馬』の主人公くらいがんばってもらいたい。
犬版『猿の惑星』とも言われてますが、別にDNAいじられるわけでもないので、野良犬たちが数百匹暴れるだけでそこまで大騒ぎにはならない。
設定部分も、どうして雑種に重税かけられているのかわからない。

という具合にストーリー部分はだいぶ甘いんですが、実際の保護施設から連れてきたと言う250匹の犬たちがただただ凄い。
犬たちの仕事ぶりを観る映画。

しかしあのラストの後、犬たちがどうなるか考えると・・・逃げ切れるとは思えないし。

撮影に使われた犬たちはみんな飼い主が見つかって引き取られたそうですが。