日々読んだ本(漫画、映画、例外的にテレビドラマ)の感想を、
ネタバレあり、粗筋なしで書いています。
批評批判は目的ではなく、個人的な感想文です。
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『土葬症 ザ・グレイヴ』

JUGEMテーマ:ミステリ

【周木律 実業之日本社】 大学の探検部が夏合宿で訪れたキャンプ地で肝試しをしようとするも、道に迷い廃病院へ辿り着く。 そこで次々と惨劇が起こるホラーかと思ったらミステリーだった。 スラッシャーホラー的なものを期待して読み始めたら、途中から、これただのミステリーだなってなった。 いや、それ自体は別にいいんだけど、ホラーとしてもミステリーとしてもなんか軽いなーという印象。 二時間もかからずサクっと読めます。90分もののB級ホラー映画みたいな感じ。 文中、令和の時代になって云々って表記があって、この本自体の出版が今年の6月ということは、執筆期間すごい短いのでは……? 書いてる途中で令和になったんだとしても。 というかこの本、夏の話しなのに本が出版されたころはまだ夏になっていないという。 令和の夏って設定にしなくてもよかったのに、言いたかったのかな。令和。 細かい話しついでに言うと、終盤の会話で、 「そう、”Linos”なんですよ」 って言われた刑事がその後 〈ライナスか、あるいは、リノスか――〉 と悩むんですけど、耳で聞いたんだから悩むのはスペルだろうと。 編集とか校正でつっこまれなかったのかな。 いまいち恐怖を感じないまま、ラストに脱力の動機が明かされる。そんなライトなホラー風ミステリーでした。
『The Book』

【集英社 乙一】

 

ジョジョのノベライズシリーズ、乙一編。

舞台は4部のその後の杜王町で、メインのメンバーもだいたいそのまま。

これを執筆していたのがたぶん、『ZOO』とかの頃だったと思うのだけれど、ちょくちょくジョジョの小説の進捗が芳しくない…とこぼしていたような記憶があり、大変なんだなーと思っていた思い出。

その頃、私はジョジョを未読だったのでその大変さがいまいち想像できてなかったけど。

読んでみて、たぶん、乙一は人のキャラや設定を借りて書くのに慣れてないのかな、という印象。

まあ、普通の作家は慣れてないのかもしれない。

あと、超ネガティブ陰キャな作風だった(今はそうでもないけど)当時の乙一、超ポジティブ肯定感の塊みたいな荒木キャラが書きにくそう。

 

という感じでこじらせが行間にただよってたけど、オリジナルキャラのパートは乙一らしい嫌な話しで、そういうじめっと感は荒木先生からは出てこないから新鮮でいいと思いました。

 

ストーリーは、4部後の2000年の年明けから数カ月にわたる、露伴と康一が遭遇した殺人事件の物語。

主にオリジナルキャラである、少年と少女、そして、数年前に起こった壁のはざまに閉じ込められた女性の視点で語られる。

オリジナルのスタンド「The Book」がおもしろかったね。

(でもラストバトル、露伴が最初に到着してたらあんまり苦戦せずに露伴が勝てそうなスタンドだった)

 

康一くんの爽やかさでなんとなくきれいに終わった気になるけど、だいぶ陰惨ですよ。こいつは。

仗助にとってはけっこう苦い事件になったんじゃあないかなあ。

億泰がとても善戦しててよかったね。

『無関係な死・時の崖』

【安部公房 新潮文庫】

 

短編が十本載っているので、印象に残ったものだけ感想を。

 

「夢の兵士」

 

「誘惑者」

始発を待つ待合所で、追手と逃亡者と思しき二人の男の間で交わされる不穏な会話で進み、ラストでわかる二人の本当の関係がなかなかサディスティック。

 

「家」

 

「使者」

講演の出番を待つ講師のところに火星人を名乗る男が現れるという突飛な話し。

この男が火星人だったかどうかは主人公にとっても読者にとってもどうでもいい感じのドライさがらしい。

 

「透視図法」

「賭」

 

「なわ」

川辺のスクラップ置き場を囲う壁の穴から覗いている男、スクラップ置き場で仔犬をいじめて遊ぶ少年達、そして川から上がってくる二人の姉妹という不気味で不快な展開の連続。

ぞっとする顛末に、唐突に現れる最後の段落。

他の短編に比べて展開の多い話しだった。

 

「無関係な死」

安部公房の主人公の理屈っぽさが如実に表れている。

自分の部屋に置かれていた見知らぬ死体をどうするか、それをずっと思案し続けるという話し。

それだけでこのページ数もつのがすごい。

 

「人魚伝」

安部公房の小説に登場する女性キャラは総じて怖いのだけど、そういう趣味なんだろうか。

沈没船に閉じ込められている人魚を見つけて、自分だけのものにしようと画策する男の話し。

うまく部屋に連れ帰ってきたものの、その後が意表を突く。

人魚が実は狂暴だというくらいならそれほど意外ではないのだけれど。

 

「時の崖」

『伏 贋作・里見八犬伝』
【桜庭一樹 文藝春秋】

どうやらアニメ映画化してたらしいけど、観てないので本書だけで。

桜庭一樹が語りなおす里見八犬伝。
八犬士は伏という妖怪にも似たものになり、江戸の町で夜な夜な人を殺す存在に。
とはいえ、八犬士すべてがそうなったわけではなく、道節は人間のまま。
原作では不憫だった浜路が主人公となり、兄の道節と共に伏を狩る狩人になる。

元々の八犬伝や滝沢馬琴のことを多少知ってた方が、こう変わったのかーという面白味があると思う。
私の好きな毛野がいきなり死んででちょっとしょんぼりする。

浜路のターンよりも、滝沢冥土が語る贋作・里見八犬伝の伏姫とその弟の話しの方が、桜庭一樹色強くて面白い。

勧善懲悪物語の、善だった八犬士を悪にしたのは一見おもしろいけど、道節はそのままだし、玉梓のことがなんとなく語り足りない印象で、ちょっと中途半端な読後感。
もっと長い話しを書く予定だったのか、と思わせる終わりでもある。
『虐殺器官』
【伊藤計劃 ハヤカワ文庫】

すごい面白かったんだけど感想書くの忘れてて詳細を書けないです。すまない。
このタイトルで特殊部隊の大尉を主人公に据えながら、とても繊細。
アニメより実写で観たいな〜と思いました。
『私の男』
【桜庭一樹 文春文庫】

震災で孤児となった花とその養父の禁忌の物語。
物語は2008年、花の結婚から始まり、徐々に遡り1993年、花とその養父・淳悟との出会いで終わる。
花と淳悟の行く末を知りながら、その始まりを追いかけていく構成。
年代を遡っていく形式の物語は、エピソードが重複して読んでいて面倒な時があるのだけれど、語り手を変え、事件のきっかけをうまく遡っていく。
そして花と淳悟の奇妙な絆の元へとたどり着く。

タイトルが『私の男』である通り、やはりこれは花の物語で、花が見た淳悟の物語。
視点を変えて淳悟や花の夫になる男、かつて淳悟と付き合っていた女、の視点から語られる章もあるが、淳悟という人間は最後まで謎めいている。
花と淳悟の愛情は美しいというには遠く、いびつで気持ちが悪い。
決して純愛という風には書かず、花と淳悟の関係の終わらせ方もよいと思う。
本当にあの二人の関係があそこで終わっているかはわからないけど、その余韻も含め。
 
『雀蜂』
JUGEMテーマ:ミステリ
【貴志祐介 角川文庫】

いまをときめく貴志祐介と東野圭吾をいまだに読んだことなくて、これはいかんな・・・と思いつつ今に至るんですが、最初に読んだ貴志作品がこれなのは失敗だったんだろうなと今は思ってます。
普通に『黒い家』にしたらよかった。

あらすじ
11月下旬の八ヶ岳。山荘で目醒めた小説家の安斎が見たものは、次々と襲ってくるスズメバチの大群だった。昔ハチに刺された安斎は、もう一度刺されると命 の保証はない。逃げようにも外は吹雪。通信機器も使えず、一緒にいた妻は忽然と姿を消していた。これは妻が自分を殺すために仕組んだ罠なのか。安斎とハチ との壮絶な死闘が始まった―。最後明らかになる驚愕の真実。ラスト25ページのどんでん返しは、まさに予測不能!

ってAmazonからコピペなんですが、これを読んだときはジョニー・デップの『シークレットウィンドウ』オチかなぁと思いながら読み始め、なんか文章に違和感があるから作中作かなぁと思い始め、そしてラストにいたる。うん、そう。
文章の違和感についてはほかの貴志作品読んでいないので、ひょっとしたら普段からこういうのかもしれないけど。

ラストのどんでん返しについてはひとまず置いておいて、ハチとの戦いが万事ギャグっぽいので、ひょっとしたらユーモア小説なのかと。
アナフィラキシーショックで一度でもハチに刺されたら死ぬという状況、展開はゲームっぽい。
雪山の山荘内で、殺人鬼に追われてるならまだしも、ハチなのであらすじ読んだ時点で服着込んで窓開ければいいんじゃないかと思ったんだけどそこにいたるまでが長くて長くて。
 
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『Pの密室』
JUGEMテーマ:ミステリ
【島田荘司 講談社文庫】

すごーく久しぶりに読みたくなったので島田御大の御手洗を。
どこまで読んだのかも定かじゃないのですが、御手洗さんが日本からいなくなったあたりからあんまり読んでいないんだろうなぁと本棚眺めてここから再開。
短編2編で、御手洗さんの幼稚園児時代と、小学生時代の事件。
小学生時代のアメリカ編は、コミックになってるのでそちらは読んでるのですが、ブローフィッシュ卿事件が割りと冒険譚だったのに対し、こちらはしっかりミステリ。

「鈴蘭事件」
ミステリ読者だとすずらんって聞くとだいたい思い当たることが一つあるんですが、さすがに島田先生はそこからもうひとひねりの真相が。
園児のキヨシくんが、女子大の中で動物だけをお友達に孤独に過ごしているのがなんとも可哀相で。
久しぶりに読むと石岡くんってこんなにネガティブだったっけ?と思ったり、ちょいちょい御手洗さんに酷いなと思ったり。

「Pの密室」
小学2年生になった御手洗少年の事件。
事件の真相よりも、それを暴いてしまうことによって誰が幸せになるのかということで葛藤する御手洗少年が切ない。
御手洗さんってこのあと何年も一人でこんなこと繰り返してるのかと思うと辛いなー。
仕掛けに関しては、島田先生らしいダイナミズムがあふるるトリック。トリックというかなんというか。
え、踏みますか?と思わないでもないが、島田先生がそう言うのならそれでいいんです。
『たったひとり』
 【乾ルカ 文藝春秋】

大学の廃墟探検サークルの5人が、27年前に土砂崩れにあって廃墟となっているラブホテルに行ったところタイムループに巻き込まれるという話し。
タイムループは土砂崩れが発生する30分前から始まり、タイムループが起こるたびに土砂崩れまでのタイムリミットが二分ずつ減るっていうのが、ちょっと変わったルール。

27年前の事故ではホテルで身元性別不明の死体が一つ発見されているので、5人のうちの一人が犠牲になって当時の事故を再現すればループから抜け出せるのではないか、という仮定で、5人がそれぞれホテルに残ることになる。
その5人の視点で語られる。
目次をみれば、5人が終了しても終わっていないことが分かるのだけれど、どうやって再現するか、本当は当時何が起こっていたか、が徐々にわかってくると同時に、5人それぞれの嫌な性格が浮き彫りになってくるのがおもしろい。
特に女子二人のキャラはとてもいい。

全然ハッピーエンドじゃないんだけれど、なぜかじめっとした印象を残さないのは、『夏光』の時みたいでよいな。
乾ルカにはホラー寄りの話しを書いてほしいなぁ。
『キマイラの新しい城』
 【殊能将之 講談社文庫】

石動シリーズなのでまともなミステリを期待して読むべからず、と言われるまでもなく冒頭からまともじゃない。
中世の騎士の霊と石動ではまともな推理が展開するはずもない!
エドガーがかたくなに現代への理解を拒否するので、非常に読みにくいので、たまに石動パートが入るとほっとする。

終わってみればミステリ的にはそれほど突飛ではなかった(『黒い仏』とかとか)のだけれど、種明かしをされるとそんなバカな!と言いたくなる。
そんなバカミスです。
そこがいいところ。
今回も無駄に参考文献が豊富。

解説で石動シリーズはやおい読みもできるって書いてたけど、余計なお世話。放っておいてくれ!