日々読んだ本(漫画、映画、例外的にテレビドラマ)の感想を、
ネタバレあり、粗筋なしで書いています。
批評批判は目的ではなく、個人的な感想文です。
<< September 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
『槐』
【月村了衛 光文社】

野外活動部の夏休み合宿で、芦ノ湖を訪れた中学生と担任が、そこでオレオレ詐欺で儲けた四十億をめぐる抗争に巻き込まれるという、サバイバルスリラー。
巻き込まれるというか、詐欺集団・関帝連合は仲間が隠した四十億を探し出すため、どうせたいした人数いないだろうとキャンプ場の人間を皆殺しにすることに。
もういきなり計画が大雑把なんだけど、中学生たちはあとあと人質とかに使えるだろと一応生きたまま捕まる。
その後、対立する中華系マフィアが出てくるのだけど、こいつら相手に中学生じゃ人質にも盾にもならないだろと。

冒頭こそ、無残に殺される人がいたけど、その後は中学生たちにはそれほどヘビーな災難は降りかからないので、子供が痛い目に合うの好きじゃないからいいんだけど、じゃあ、なんで中学生にしたんだ、という疑問もある。
中学生たちが『ホーム・アローン』ばりに知恵を絞って戦うのかなと思ったけど、途中から”槐”が登場し敵をなぎ倒していく。
爽快感あると言えるけど、槐のキャラがいまいちかっこいいとも言い切れない。

一気読みできる話しではあるけど、全体的にキャラの魅力薄いなーという印象だった。
『さくら』
【西加奈子 小学館文庫】

兄が死んで、ばらばらになった家を出た僕が、ある年の暮れに実家に帰る。
出て行っていた父も帰ってきて、そこから家族の再生の物語になるのかと思いきや、僕と兄と妹、長谷川家の生い立ちがずっと語られる。
兄が死んでることはわかっているので、いったいいつどういう理由で死ぬのだろうと最初は思いながら読むのだけど、この絵に描いたような幸せで美しい家族が崩壊するきっかけとなる兄の死が近づいてくる頃には、長谷川家に感情移入していてつらい気持ちになってくる。

言葉で説明してしまえば、普通の幸せな家族なのだけど、ひとりひとりは一風変わったキャラになっている。

うちにも犬がいて、そして犬がいたころは幸せな家庭だったと言えるなぁと思うと、家族とさくらのシーンがやたらと泣ける。

西加奈子というと、共感百景の人なんだけど(私としては)、情景の切り取り方とそれを現す比喩の多彩さはやはりその本業でこそ発揮されるものなのだなぁ。

 
『ボディ&ソウル』
【古川日出男 河出書房文庫】

初めて読む古川日出男がこれだったら途方に暮れただろうな、という話の筋を説明しがたい一作。
まさにボディ・アンド・ソウルで、この疾走感、しかし内容があるんだかなんだかわからない。一見エッセイにも見えるが、虚実入り混じってるようにも見える。
けど、きっと虚なんだろうという予感。
最後になんだか狐につままれたような気になる。

まあとにかく考えずに読む。
解説のいしいしんじまで、本文にひっぱられてよくわかんないことになってるのはちょっとどうかと思ったけど。

町中にあふれるYahoo!BBの勧誘が時代だなぁ。いたな、町中に。
『ニ00二年のスロウ・ボート』
 【古川日出男 文春文庫】

あらすじによると「『出トウキョウ記』であり、その失敗の記録」「三つのボーイ・ミーツ・ガール」。
そういう話しでした。
明確に書いていないけれどここに登場する東京はヒートアイランド化している、『サウンドトラック』の東京と同じなのかねぇ。

まあ、それはさして。
あとがきによると村上春樹の『中国行きのスロウ・ボート』のリミックスとのことですが、春樹の方は読んでないのでどこがどう、というのはわかりません。
古川日出男がそんなに村上春樹に傾倒していたとは知らなかったな。
とは思いつつ、ベルカとか夜の種族のイメージだったからであって、本書は確かにそれっぽい。

愛の物語に興味薄いので、あまりこれという感想も出てこなかったです。
『戦国BASARA3 徳川家康の章』
 【タタツシンイチ 講談社BOX】

ゲームノベライズ、と言うかオリジナルストーリーと言うべきか。
まあ、ほぼゲーム通りだった伊達政宗の章に比べて、オリジナル感がある。
戦闘シーンが筆頭のほどないね。
ゲームやってて、3になったらいきなり家康はでかくなるし、秀吉を殺しちゃうしで、一体家康に何があった、と思ったものだけれど、別にこれを読んでもよくわからないです。
家康と、孫市が主に出ているんですが、孫市の性格がこんなんじゃないだろうと。
姐さんもっと男前だよ?
という不満が常に。

あとは官兵衛さんの口調も違ったな、ということは言っておきたい。

でも史実ネタも入れて調べて書いたんだなぁという印象はあった。
資料もらってるのかもしれないけど。
『神様のカルテ 3』
 【夏川草介 小学館】

なんとなく2で終わった気がしていたけれど、3が出ました。
3にして、イチに転機が訪れます。
ということは4もあるのかな。
なにしろ、イチはようやく30になったばかりで、これからまだまだ経験することは多そうです。

古狐先生の代わりにやってきた、小幡先生がどんなものかなと思ったけれど、よかったです。
もう少し、小幡先生との仕事ぶりを見たかったですが、4からは新しい面子との仕事になるんでしょうか。

相変わらず栗原夫妻はかわいいですが、イチとタツの間柄をきゃっきゃと見守る看護師の皆様方の背を押したい。
『バチカン奇跡調査官』
 【藤木稟 角川書店】

奇跡が本物かどうかを調査する神父二人が主人公。
そのまんまの説明ですいませんね。
平賀はそんなに美形である必要あるのかね。

殺人動機があまりぴんとこなかった。
かなり流し読みしてたからあるいは読み落としている可能性もあるけど。
セバスチャンの視点はそんなに必要だったかな、とか。
全体的にピントがずれた印象がある。

いずれ本物の奇跡に遭遇する展開になったりするんだろうかね。
『月光のイドラ』
 【野阿梓 中央公論社】

端的に言うと山藍紫姫子みたいな感じ。
ミステリーっぽい少年愛ものかなぁと思いながら読んでると、諜報ものっぽくなり、しまいにはSFめいてきて、ついでにSMも入ってくるという眩暈のする内容。
そんなに色々つっこむから・・・・・・キャラ薄いんじゃないのか。
雅がどれくらい公彦に思い入れているのかわからなかったし、公彦が先生や澄於に対してどういう感情を持っていたのかも結局良く分からなかった。

あれよあれよという間に話しが進み、置き去りにされたまま話しが終わっていた。
『村田エフェンディ滞土録』
 【梨木香歩 角川文庫】

『家守綺譚』と対になるような話し。
土はトルコのこと。小説では土耳古と表記されている。
現代のトルコではなく、土耳古と表記されているせいもあって、どこかファンタジックな印象。
現地の神様と稲荷がもめたりするのも不思議な感じ。

そんな不思議な雰囲気を漂わせながら、村田が土耳古で出合った現地の人や、同じように勉学のために来たオットーや、ディミィトリスとの友情が語られる。
世界大戦が始まり、それぞれの運命を辿るのだけれど、村田の元に最後に残された物がたどり着くラスト、切なく胸に迫る。
『収穫祭』
 【西澤保彦 幻冬舎】

私が読んだのはハードカバー版なのですが、表紙が全てという気がします。

嵐の晩に村民14名が殺されるという第一章が一番おもしろかったなぁ。
そこが終わって、繭子パートになるともうなんだか面倒くさい。
早く思い出せよ、と。読者がとうに周知していることをなかなか思い出さないから大変イライラとする。

第一章にしても、省路視点なのだけれど、死体がばんばん発見される中でエロのことばっかり考えているというあたりに、もっとよく状況を観察しろ!と言いたくなる。
冒頭に限らず登場人物がみんなエロのことしか考えていないのはこの小説に一貫してますけど。

書き方として気になったのが、語り手が誰かを目撃するあるいは出会って、すぐに誰か思い出せない→数ページ後に思い出すというパターンが多い。
登場人物同士のニアミスもやたら多い。運命の皮肉さみたいなのを書きたいのかもしれないが、世間が狭すぎるだろう、と。

みんなたまにはゲンキのこと思い出せよ。本当に。

以下ネタバレ。
続きを読む >>