【重松清 新潮文庫】
おすすめされて、初めて読みます、重松清。
全く知らないのですが、なんとなく家族小説を書く人、というイメージでした。
本書は極めて私小説に近い話し、として書かれているようで、家族小説とは違いました。
初めて読んだ第一印象は、凄い上手い、でした。
プロに向かってその印象もない気がしますが、文章そのものが上手い人ってなかなかいないと思う。
少年の小学生から、大人になるまでの話なのですが、この少年のエピソードの一つ一つにかつての自分が重なって、個人的にひどくナーバスな気持ちになる小説でした。
感想もずいぶん私的なことになってしまいますがご容赦を。
「きよしこ」
私は吃音だったわけではないけれど、少年の苛立ちやもどかしさ、悲しさにはなんとなく覚えがある。
やたらめったら内向的だったことを思い出す。
「乗り換え案内」
加藤君みたいな子がクラスメイトにいたな、ということを思い出した。
吃音だったわけではなく、いっつもいたずらしてた。
なぜだか私はそのこと仲良くやってた。
先生には嫌われてたけど。
「どんぐりのココロ」
感想パス。
「北風ぴゅう太」
私が小学生の頃の担任を思い出した。
ものすごーく引っ込み思案だた私を、主役に抜擢するような先生だった。
今ならそういう強引さは問題になるような気がするけれど、それは大事な経験だったと思う。
「ゲルマ」
やっぱり中学の頃の友人を思い出した。
なんだかもう何もかも切ない。
「交差点」
やっぱり中学の頃の部活動を思い出した。
スポーツ漫画のような、実力でどうこういう世界じゃないんだよなぁ。部活って。
少年は強くなったなぁと思う。
「東京」
いやもう、切ない。
優しさが悲しい。
解説はあさのあつこさん。
きよしのことを書いているはずなのに、どうしてもそれが『バッテリー』の巧のことのように思える。
人に贈りたいと思える一冊。